身延山久遠寺とは|日蓮聖人ゆかりの日蓮宗総本山
身延山久遠寺は、日蓮聖人が文永11年(1274年)に身延山へ入り、法華経の読誦や弟子の教育に励み、弘安4年(1281年)に本格的な堂宇を建てて「身延山妙法華院久遠寺」と名付けたことを起点とする寺院です。
祈りと修行が続く場所であり、観光地としてだけでなく、信仰の場として向き合う姿勢が大切です。
日蓮聖人が晩年を過ごした身延山
日蓮聖人は文永11年(1274年)に身延山へ入り、西谷に草庵を構え、法華経を読み、弟子や信徒を導きながら約9年間を過ごしました。
その草庵を基に久遠寺が開かれ、後に伽藍は現在の中心境内へ移されました。
本堂周辺の壮大な建築と、西谷に残る御草庵跡の両方を訪れると、久遠寺が発展してきた流れを立体的に理解できます。
寺院建築と山岳信仰が重なる場所
久遠寺では、三門、石段、堂宇、杉林、谷あいの参道が一つの宗教空間をつくっています。
建物だけを急いで見て回るより、三門をくぐり、山の空気や読経の響きに耳を傾けながら進むほうが、身延山らしい体験になります。
静かに歩くこと自体が参拝の一部と考えると、境内での過ごし方が自然に整います。

身延山久遠寺の見どころ|三門から本堂へ
中心境内では、三門から本堂へ向かう軸線に象徴的な建築が並び、久遠寺の世界観を感じられます。
足元と周囲の参拝者に配慮しながら、建物の役割や意匠にも目を向けてみましょう。
三門と菩提梯が示す祈りの道
堂々とした三門(さんもん)は、「空」「無相」「無願」という仏教の三つの解脱をあらわす門です。
門の先には、本堂へ向かってまっすぐ延びる287段の急な石段「菩提梯(ぼだいてい)」があり、下から見上げると杉木立の間に祈りの道が浮かび上がります。
菩提梯は南無妙法蓮華経の七字にちなんで七区画に分けられ、勾配が急なため、体調や履物に不安がある場合は無理に選ばず、坂道や別の移動方法を利用してください。
本堂と天井画「墨龍」
本堂は、間口32メートル・奥行51メートルにおよぶ久遠寺の中心となる法要と祈りの場で、昭和60年(1985年)に日蓮聖人第七百遠忌の記念事業として再建されました。
本堂外陣の天井には、戦後を代表する日本画家・加山又造(かやままたぞう)が描いた「墨龍(ぼくりゅう)」があり、11メートル四方・23,500枚の金箔の上に墨で描かれた龍が堂内を見守るように広がっています。
堂内は祈りの空間であるため、入る前に帽子を外し、会話や物音を控え、掲示や僧侶の案内に従いましょう。
祖師堂と五重塔のたたずまい
祖師堂は日蓮聖人を祀る堂で、江戸時代に廃寺となった感応寺のお堂を明治14年(1881年)に移築・再建した建物です。
近くに立つ五重塔は、明治8年(1875年)の大火で焼失して以来134年ぶりに、平成21年(2009年)5月に約400年前の工法で復元された塔で、堂宇が並ぶ境内景観に垂直のリズムを加えています。
建物の正面だけでなく、屋根の重なりや軒下の細部を見ると、日本の寺院建築の美しさを味わえます。
宝物館と写経体験
本堂地階の身延山宝物館では、身延文庫が所蔵する国宝・重要文化財などの文化財や寺宝が展示されています。
拝観時間は午前9時から午後4時(入館は午後3時30分まで)で、休館日は木曜日(祝日の場合は翌日)です。
館内には入館者が取り組める写経コーナーもあり、日本の仏教文化を手を動かしながら体験できます。

御廟所と御草庵跡でたどる久遠寺の原点
中心境内とは別に、西谷の御廟域には日蓮聖人の御墓と御草庵跡が守られています。
華やかな伽藍とは異なる静けさがあり、久遠寺の歴史を深く知りたい人にとって大切な参拝先です。
御草庵跡に残る創建の記憶
御草庵跡は、日蓮聖人が身延山で生活し、法華経の読誦や弟子の教育、書状の執筆などに励んだ場所です。
現在は石造の玉垣に囲まれ、久遠寺発祥の地として大切に守られています。
建物の大きさを楽しむ場所ではなく、限られた空間に重なる時間を想像しながら手を合わせる場所です。
祖廟で静かに手を合わせる
祖廟(そびょう)は、日蓮聖人の遺命に従って身延山に設けられた御墓です。
御廟域では、写真を撮ることよりも、まず周囲の静けさと祈りを尊重してください。
参拝者が読経している場合は距離を取り、通路をふさがず、声を落として進みましょう。
中心境内と御廟域の違いを意識する
本堂周辺は大規模な堂宇が集まる久遠寺の中心であり、御廟域は日蓮聖人の生活と墓所に近づく場所です。
両方を同じ感覚で眺めるのではなく、中心境内では伽藍の構成を、御廟域では由緒と静けさを意識すると理解が深まります。
御廟域へ向かう道には坂があるため、時間と体力に余裕を持って行動してください。

境内で迷わない歩き方とアクセス
身延駅からはバス約12分またはタクシーで門前町へ
公共交通で訪れる場合、JR身延線の身延駅から「身延駅=身延山」路線バスで約12分、門前町で下車します。
タクシーも利用でき、運行状況や乗り場は変更される場合があるため、出発前に交通事業者と久遠寺の案内を確認してください。
門前町から三門へ向かう道にも勾配があるため、大きな荷物は宿泊先などに預けておくと歩きやすくなります。
石段を避けたいときの選択肢
三門から本堂へは菩提梯だけでなく、男坂(おとこざか)と女坂(おんなざか)と呼ばれる迂回路があります。
西谷せいしん駐車場から境内へ階段を使わず上がれる斜行エレベーターも設けられているため、階段に不安がある人は境内案内で位置を確認しましょう。
車いすの貸し出しには数に限りがあるため、必要な場合は事前に寺へ問い合わせると安心です。
身延山久遠寺を季節ごとに楽しむ
身延山は堂宇と自然が近く、同じ参道でも季節によって光、葉の色、空気の印象が変わります。
景観だけでなく、山あいの天候に合った服装と足元を整えることが、快適な参拝につながります。
春はしだれ桜と堂宇の調和を味わう
春の久遠寺では、樹齢400年ともいわれる境内のしだれ桜が堂宇の屋根や朱色の建物をやわらかく彩り、例年3月中旬ごろから開花し始めます。
花の時期は年ごとの気候で変わるため、開花状況を確認してください。
花だけにカメラを向け続けず、参拝者の通路を空けることも忘れないようにしましょう。
夏は杉木立と山の緑を感じる
夏は杉木立や山の緑が濃くなり、石段や参道に木陰が生まれます。
暑さや急な天候変化に備え、飲み物を用意し、休憩を挟みながら歩くことが大切です。
秋は御廟域まで足を延ばす
秋は境内や谷あいの木々が場所ごとに色づき、中心伽藍とは異なる静かな景観を楽しめます。
御廟域では落ち葉で足元が滑りやすくなる場合があるため、歩幅を小さくして進みましょう。
冬は静けさと澄んだ空気を味わう
冬は木々の輪郭や建築の形が見えやすく、境内の静けさに意識を向けやすい季節です。
冷え込みや路面状況は日によって変わるため、防寒と滑りにくい履物を準備してください。
季節ごとの視点と準備を簡潔に整理すると、次のようになります。
| 季節 | 注目する景観 | 準備の要点 |
|---|---|---|
| 春 | しだれ桜 | 開花確認 |
| 夏 | 杉と深緑 | 水分と休憩 |
| 秋 | 谷の色づき | 足元に注意 |
| 冬 | 建築の輪郭 | 防寒と靴 |

写真撮影・服装・参拝マナー
久遠寺は写真を楽しめる場所である一方、僧侶や参拝者が祈りを続ける宗教施設です。
撮影の可否だけでなく、音、立ち位置、服装、他者への配慮まで含めて行動を整えましょう。
堂内は原則撮影禁止、屋外は自由に撮影可
堂内の撮影は原則禁止され、屋外は自由に撮影できます。
ただし、法要中や混雑時、個別の掲示がある場所では、その場の指示を優先してください。
三脚や長時間の立ち止まりで通路をふさがず、人物を近くから撮る場合は本人の同意を得ましょう。
合掌と一礼を基本にする
寺院での参拝に複雑な作法を覚える必要はありませんが、堂前で姿勢を整え、静かに合掌することが基本です。
読経の意味が分からなくても、周囲の動きを尊重し、途中で横切ったり大声で話したりしないことが大切です。
露出の多い服装を避け、脱ぎやすい帽子と歩きやすい靴を選ぶと、堂内と山道の両方に対応できます。
ペット同伴と移動支援のルールを確認する
ペットは屋内ではケージに入れる必要があり、屋外でも他の参拝者への配慮が求められます。
補助が必要な旅行者は、斜行エレベーターや境内の移動設備について事前に案内を確認してください。
行動の違いを整理すると、参拝時の判断がしやすくなります。
| 場面 | 行ってよいこと | 控えること |
|---|---|---|
| 屋外撮影 | 通路外で短時間 | 場所の占有 |
| 堂内 | 静かに合掌 | 原則撮影 |
| 法要中 | 後方で参拝 | 会話と移動 |
| ペット | 規則を守る | 放して歩く |
まとめ|身延山久遠寺を静かに味わうために
身延山久遠寺は、三門、287段の菩提梯、本堂、祖師堂といった大きな伽藍と、御草庵跡や祖廟に残る日蓮聖人の歩みを一緒にたどれる寺院です。
急な石段を無理に登らず、斜行エレベーターや女坂など自分に合う経路を選び、堂内では撮影を控えて静かに手を合わせることが、安心して参拝する基本になります。
行事、交通、拝観、設備の案内は出発前に確認し、山の自然と信仰の場の両方を尊重しながら巡りましょう。




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