温泉津やきものの里を訪ねる前に知っておきたいこと
島根県大田市温泉津町にある温泉津やきものの里(ゆのつやきもののさと)は、江戸時代から続く温泉津焼の歴史にふれながら、器の見学や陶芸体験を楽しめる場所です。
訪問を考えるなら、まずは焼き物のどんなところに興味があるかを思い浮かべてみましょう。
器の色や形を眺めたいのか、暮らしで使う器を探したいのかによって、旅先で注目したい点が変わります。
温泉津焼と巨大な登り窯の基本を知る
温泉津焼(ゆのつやき)は、江戸時代の宝永年間(1704〜1711年)に3つの窯が開かれたことに始まるとされています。
温泉津は石見銀山(いわみぎんざん)の銀の積み出しや交易の港として栄え、北前船も出入りした港町でした。
付近で良質な陶土や釉薬が採れ、登り窯を築きやすい傾斜地にも恵まれていたことから、幕末から明治にかけて「はんど」と呼ばれる大きな水がめをはじめとする日用の陶器の産地として発展しました。
温泉津やきものの里のシンボルは、全国でも最大級といわれる長さ約30mと約20mの2基の登り窯です。
登り窯は斜面に沿っていくつもの焼成室を階段状に連ねた窯で、最盛期の温泉津には10数基の登り窯があったと伝えられています。
敷地内のやきもの館は1990年に開館し、温泉津焼の資料展示、陶芸体験、地元の窯元の作品販売を行っています。
温泉津では、陶芸家・河井寛次郎(かわいかんじろう、1890〜1966年)の流れをくむ椿窯や森山窯など、3つの窯元が作陶を続けています。
温泉津焼は、島根県の伝統工芸品の一つです。
焼き物を楽しむ目的を決める
初めて焼き物にふれる人は、専門的な知識を覚えるよりも、気になる色や使ってみたい形を見つけるところから始めると親しみやすくなります。
普段使っているカップや皿を思い出すと、旅先で出会った器との違いを具体的に感じられます。
同行者と好みを話しておけば、同じ器を見ても着目する部分が違うことを楽しめるでしょう。
温泉津焼の成り立ちに関心がある人は資料展示を、持ち帰る器を探したい人は地元の窯元の作品が並ぶ販売コーナーを、それぞれじっくり見る時間を取っておくと満足度が高まります。
開館日と見学・陶芸体験の予定は分けて確認する
訪問日を決めるときは、営業の案内と、希望する見学・体験の受け入れ条件をそれぞれ確認してください。
温泉津やきものの里のやきもの館は9:00〜17:00に開館しており、入館は無料です。
休館日は毎週水曜日と年末年始(12月29日〜1月3日)で、臨時休館もあるため、公式サイトの営業カレンダーで事前に確かめておくと安心です。
陶芸体験は予約制で受け入れ人数にも限りがあるため、開館している日でも、その場で希望する体験へ参加できるとは限りません。
旅程に組み込む前に、希望日の予約状況を問い合わせておくことが大切です。
日本語での問い合わせが難しい場合は、希望日、人数、やりたいことを短い文章にまとめると、相談内容を伝えやすくなります。
問い合わせには電話のほかメールも利用できるので、文章で相談したいときに活用できます。
行き方を調べる際には、帰りの移動手段も合わせて確認し、見学後の予定に余裕を持たせましょう。
やきもの祭りと登り窯の窯焚きの時期
温泉津やきものの里では、春と秋の年2回、やきもの祭りが開かれます。
4月中旬と10月中旬ごろの土曜日・日曜日に開催されます。
祭りのおよそ1週間前には登り窯の窯焚き(かまたき)が行われ、巨大な窯に炎が入る様子を見られる機会があります。
開催日や窯焚きの日程は年ごとに異なるため、開催案内で日程を確認してください。

温泉津やきものの里で楽しむ焼き物の見方|土・釉薬・形に注目
焼き物を見る楽しみは、表面の模様だけでなく、輪郭や質感にもあります。
全体の印象から細部へと視線を移すと、似た色の器にも違いを見つけやすくなります。
まずは器の輪郭と土の表情を見る
少し離れて全体を眺め、口の広がり、胴のふくらみ、底へ向かう線を追ってみましょう。
丸みのある形と直線的な形では、同じ用途の器でも印象が変わります。
土の色が見える部分があれば、粒の見え方や表面の凹凸にも目を向けると、装飾とは別の面白さに気づけます。
温泉津焼は、耐火性の高い石見粘土(いわみねんど)を使い、約1300℃の高温で焼成するため、硬く焼き上がって割れにくいのが特徴です。
長く使える日用の器として親しまれてきた背景を知ると、素朴な土の表情にも愛着がわいてくるでしょう。
釉薬の色と光の映り方を楽しむ
釉薬は「うわぐすり」とも呼ばれ、焼き物の表面を覆うガラス質の層をつくります。
温泉津焼の水がめ「はんど」は、あめ色の来待釉(きまちゆう)に「たれ」と呼ばれる黒色の模様をつけたものが主流でした。
地元の椿窯では、河井寛次郎が好んで使った青い呉須(ごす)や赤い辰砂(しんしゃ)を用いた器も作られています。
気になる器は、つやの強さ、色の濃淡、模様の境目などを眺めてみてください。
色の名前を正確に言い当てる必要はなく、「落ち着いて見える」「料理が映えそう」といった自分の印象から楽しめます。
展示の説明などで目にする用語を、観察する場所と合わせて整理します。
| 用語 | 意味 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 釉薬(ゆうやく) | 表面に施すうわぐすり | 色とつやの違い |
| 高台(こうだい) | 器の底を支える部分 | 高さと形 |
| 見込み(みこみ) | 器の内面や内側の底 | 内側の模様と余白 |
形から使われる場面を想像する
器の口が広いか、深さがあるか、持ち手が付いているかを見ながら、どのように使いたいか考えてみましょう。
歴史的な器については、見た目だけで用途を決めつけず、説明を読んだりスタッフに尋ねたりすると理解が深まります。
やきもの館では温泉津焼の歴史資料や秀作が展示されているので、かつての暮らしを支えた道具としての器にも目を向けてみましょう。
自宅の食卓と結び付けて見ることで、鑑賞と器選びの両方を楽しみやすくなります。

温泉津やきものの里の見学・撮影で大切にしたいマナー
焼き物を扱う場所では、作品に触れてよいか、写真を撮ってよいかを先に確かめることが基本です。
鑑賞用の展示と販売品を同じように扱わず、その場の掲示や案内に従いましょう。
器に触れる前に確認し、周囲にも気を配る
手に取ってよい器は、棚の端で無理に持ち上げず、周囲の作品に当たらない位置で丁寧に扱います。
ふた付きの器を見たいときや、底を確かめたいときは、持ち方をスタッフに尋ねると安心です。
大きなバッグや上着が作品に触れないように気を配り、荷物を置く際も指定された場所があるか確認してください。
工房や窯の周辺を見学する場合は、案内された範囲を歩き、道具や制作途中のものには手を触れないようにしましょう。
登り窯は斜面に沿って築かれているため、窯の周りを歩くときは足元に気を付け、歩きやすい靴で訪れると安心です。
撮影では作品と人の両方に配慮する
建物の外であっても、作品、作業風景、人が写る写真を撮る前には確認してください。
人物の撮影や、撮った写真をSNSへ掲載することも、相手の意向を尊重しましょう。
撮影できる場合も、通路を長くふさいだり、説明や作業を遮ったりせず、周囲と場所を譲り合うことが大切です。
窯焚きの時期は火を扱う作業が続くため、窯に近づきすぎず、係の人の案内に従って見学しましょう。

温泉津やきものの里で陶芸体験をするときの準備と確認事項
制作に興味がある人は、作りたいものだけでなく、参加条件と完成品の受け取りまで考えて準備しましょう。
訪日旅行者は、説明を理解できる方法があるかを予約前に確認しておくことが大切です。
手びねり体験と絵付け体験の内容・料金
温泉津やきものの里の創作体験には、主に「手びねり体験コース」と「絵付け体験コース」があります。
手びねり体験は所要時間40〜60分で、手ろくろの上で湯のみ、コップ、皿、ふくろうなどを、スタッフの指導を受けながら形づくります。
1人分の粘土から2つまで作ることができ、料金は高校生以上2,800円、中学生以下2,000円(材料費・焼成代・消費税込み、送料別途)です。
絵付け体験は所要時間30分で、素焼きの神楽面(かぐらめん)やだるまにアクリル絵の具で色を付け、料金は各1,500円です。
体験は9:00〜11:00と13:00〜16:00の間に開始でき、いずれも事前の予約が必要です。
インストラクターが指導するため、陶芸が初めての人でも取り組みやすい内容です。
2名以上で予約して当日の来館後にキャンセルすると100%のキャンセル料がかかるため、人数の変更やキャンセルは前日までに連絡しましょう。
申し込み前に、希望するコースの料金と内容を確認してください。
参加方法と対応言語を事前に相談する
体験を希望する場合は、実施の有無、予約方法、参加できる条件を確認してください。
翻訳アプリを用意していても、道具の扱い方などの説明を十分に理解できるとは限らないため、対応言語や同行者による通訳の可否も相談しましょう。
料金を確認するときは、材料費や焼成代のほか、作品の送料がどれくらいかかるかも合わせて聞いておくと、予算を考えやすくなります。
作りたい形と動きやすい服装を考える
参加が決まったら、普段の暮らしで使ってみたいものを思い浮かべ、希望する形を簡単な絵にしておくと説明に役立ちます。
手びねり体験では湯のみやコップ、皿などが作例として挙げられているので、その中から使ってみたいものを選ぶとイメージしやすくなります。
1人分の粘土から2つまで作れるため、作りたいものを2つ考えておくと当日迷わずに取り組めます。
作れる大きさや形は指導内容に合わせて相談し、細かな部分まで決めすぎないほうが取り組みやすくなります。
服装は汚れても差し支えないものを選び、袖やアクセサリーが作業の妨げにならないように整えましょう。
完成後の受け取りを帰国日から逆算する
作品がいつ完成し、どのように受け取れるのかは、申し込む前に確かめたい点です。
温泉津やきものの里の手びねり体験では、作品をスタッフが仕上げ・釉かけ・焼成したうえで発送する仕組みで、送料は別途かかります。
一方、絵付け体験の作品は当日持ち帰れるため、後日の受け取りが難しい旅程でも参加しやすいコースです。
手びねり体験を選ぶ場合は、発送までにかかる期間の目安を申し込み時に確認し、帰国後に届く場合は配送先や費用も相談してください。
海外への発送や宿泊先での受け取りは、利用できると決めつけずに確認することで、旅程との行き違いを防ぎやすくなります。

温泉津焼の器をお土産に選ぶときのポイント
器を選ぶときは、見た目の好みに加えて、帰国後にどの場面で使うかを具体的に考えると選びやすくなります。
飾る場所や収納する棚も思い浮かべながら、日常の暮らしに合うものを探してみましょう。
やきもの館では地元の窯元の作品が販売されているため、温泉津焼ならではの色や質感を見比べながら選べます。
いつもの食卓に合わせて比べる
購入を検討する器を手に取れる場合は、持ったときの重さや手への収まりを確かめてみてください。
日本料理用という印象にとらわれず、自宅でよく作る料理や飲み物に合わせて考えると、使い道が広がります。
硬く焼き締まった温泉津焼は日用の食器に向いているとされ、毎日使うカップや取り皿としても取り入れやすい器です。
使う場面ごとに、選ぶときの着眼点を整理します。
| 使う場面 | 比べたい部分 | 考えること |
|---|---|---|
| 朝の飲み物 | 持ち手と口の形 | 手になじむか |
| 料理の盛り付け | 深さと縁の広さ | 盛りたい料理に合うか |
| 食卓での取り分け | 大きさと重さ | 渡しやすいか |
| 棚に飾る | 輪郭と色合い | 置き場所に合うか |
電子レンジや食器洗浄機などで使えるかは、見た目で判断せず、その器の取扱説明を確認しましょう。
持ち帰り方と手入れまで確認する
購入時には帰国まで移動が続くことを伝え、梱包について相談すると準備を整えやすくなります。
荷物に入れるときは、器同士や硬いものが直接ぶつからないようにし、移動中に中身が動かないよう収めてください。
飛行機へ持ち込む荷物に入れたい場合は、利用する航空会社の手荷物条件も確認しましょう。
大きな器や重い器を複数購入する場合は、手荷物の重さが増えるため、配送を利用できるかを購入時に尋ねてみてください。
使い始めの準備や洗い方は器ごとの案内に従い、分からない点を購入時に尋ねておくと、帰宅後も扱いやすくなります。
温泉津やきものの里へのアクセス
温泉津やきものの里は、世界遺産「石見銀山」に近い温泉津温泉の東側に位置しています。
移動手段に合わせて行き方と帰りの交通を確認し、計画を立てましょう。
電車・車でのアクセスと駐車場
所在地は島根県大田市温泉津町温泉津イ22-2で、最寄り駅はJR山陰本線の温泉津駅です。
温泉津駅からは徒歩約12分、タクシーで約5分が目安です。
車の場合は山陰道の温泉津ICから約6分、江津ICから約25分で、施設には10台分の駐車場があります。
石見銀山世界遺産センターからは車で約25分、出雲大社からは車で約70分かかります。
施設にはWi-Fiも用意されているため、翻訳アプリや地図アプリを使いたいときにも役立ちます。
まとめ|温泉津焼の見方と体験の準備を整えて訪ねよう
温泉津やきものの里への訪問を考える際は、器の輪郭や色、日常での使い道を思い浮かべると、見たいものが整理できます。
江戸時代から続く温泉津焼の歴史や全国でも最大級といわれる登り窯について知っておくと、展示や器の見え方も変わってくるでしょう。
見学では作品や作業する人に配慮し、陶芸体験を希望する場合は予約と参加条件、言語、完成品の受け取りを事前に確認しましょう。
気に入った器を選ぶ楽しみと、手仕事に目を向ける時間を、自分の旅の目的に合わせて取り入れてみてください。



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