日光杉並木街道とは?歩いて楽しむための基本
日光杉並木街道(にっこうすぎなみきかいどう)を歩くなら、総延長約37kmの並木道から歩く区間を絞り、杉の幹が連なる景色を立ち止まったり視線を変えたりしながら楽しみましょう。
歩く範囲を絞り、木々の姿と道のつながりに目を向けると、散策の目的がはっきりします。
日光杉並木の歴史と約37kmの規模を知る
日光杉並木は、徳川家康の家臣だった松平正綱(まつだいらまさつな)・正信の親子2代が、1625年(寛永2年)から20数年かけて杉を植え、日光東照宮へ寄進したのが始まりとされています。
並木は栃木県日光市・鹿沼市の日光街道・例幣使街道・会津西街道の3つの街道に沿って続き、総延長は約37kmに及びます。
並木の杉は約12,000本あり、2025年には植樹の始まりから400年の節目を迎えました。
「日光杉並木街道附並木寄進碑」として国の特別史跡と特別天然記念物の両方に指定されており、この二重指定を受けているのは日本で唯一です。
世界で最も長い並木道として、ギネス世界記録にも認定されています。
歩く距離より、見たい景色を決める
初めて訪れるなら、長く歩くことを目標にせず、並木の奥行きや幹の表情など、気になるものを探す歩き方がおすすめです。
総延長約37kmを一度に歩き通すのは難しいため、まずは1〜3km程度の区間を選ぶと、景色を味わう余裕が生まれます。
歩く時間は1kmあたり15分前後を目安にし、写真を撮りながら進む場合はさらに余裕を持たせましょう。
写真を撮りたい人は立ち止まる余裕を、同行者と過ごしたい人は歩調を合わせる余裕を、予定に組み込みましょう。
ほかの観光と組み合わせる場合も、移動だけで予定を埋めず、景色を見るための時間を残しておくと楽しめます。
日光街道・例幣使街道・会津西街道という3つの道に目を向ける
街道は、町や地域を結ぶ道を指す言葉です。
日光杉並木街道は、宇都宮方面から今市を経て日光へ向かう日光街道、日光東照宮に供え物を納める朝廷の使い(日光例幣使)が通った例幣使街道(れいへいしかいどう)、今市から北の会津方面へ向かう会津西街道(あいづにしかいどう)の3つから成ります。
日光街道と例幣使街道が合流する今市の分かれ道には、追分地蔵尊(おいわけじぞうそん)がまつられています。
杉だけを切り取って眺めるほかに、道がどの方向へ伸び、木々がどのように沿っているかを見ると、並木と道を一緒に味わえます。
現地に説明板があれば、地名や道の名前を確かめながら歩くと、風景と案内の内容を結び付けやすくなります。
日光の神橋(しんきょう)付近などには、杉の植え付けを終えた記念に1648年(慶安元年)に建てられた並木寄進碑(なみききしんひ)も残っています。

日光杉並木街道で歩く区間は、出発地点と帰り道から選ぶ
日光杉並木街道の散策は、歩き始める場所と歩き終える場所を決めてから、交通手段を調べると計画しやすくなります。
初めてなら上今市駅に近い杉並木公園から歩き始める
初めての散策なら、日光街道沿いにある杉並木公園(日光市瀬川)を起点にすると、駅から近く計画を立てやすくなります。
杉並木公園は、東武日光線の上今市(かみいまいち)駅を降りてすぐの場所にあります。
車の場合は日光宇都宮道路の今市ICから約3分で、国道119号沿いと上今市駅の近くに無料駐車場があります。
杉線香の生産が盛んな今市エリアでは水車が製造の動力に使われており、園内でも米つきや粉ひきなどに使われた水車が回る様子を見られます。
1830年に建てられた旧江連家の住宅は移築保存されており、10時〜16時に無料で見学できます(12月29日〜1月3日は休館)。
二宮尊徳(にのみやそんとく)の報徳仕法によって建てられた農家を復元した建物もあり、現在はそば店として営業しています。
公園は杉並木に沿って整備されているため、まずは園内と周辺の並木を歩き、物足りなければ日光方面や今市方面へ足を延ばすと無理がありません。
JR今市駅からは追分地蔵尊を起点にする
JR日光線を利用する場合は、今市駅から徒歩5分ほどの追分地蔵尊を起点にすると、日光街道と例幣使街道の分かれ道から歩き始められます。
分かれ道から先は進む方向で歩く街道が変わるため、どちらの並木を見たいかを地図で確かめてから出発しましょう。
地図では歩きたい区間まで確認する
目的地名を検索しただけで出発せず、自分が見たい並木と地図の表示位置が合っているかを確認しましょう。
日光杉並木街道は複数の街道にまたがるため、「日光街道」「例幣使街道」のように街道名まで確かめると、歩きたい並木を見つけやすくなります。
観光案内の地図と照らし合わせ、乗り物を降りる場所から歩き始める場所までの経路も見ておきます。
日本語の地名を読みにくい場合は、目的地の名称と地図を保存しておくと、案内を尋ねるときに役立ちます。
たとえば「杉並木公園」「上今市駅」「追分地蔵尊」のように、漢字の表記を控えておくと安心です。
歩行者が通れる道を選ぶ
並木が続いているからといって、そのまま歩き続けてよいとは限りません。
道路標識や現地の案内を見て、歩行者が通れる場所、車の通行がある場所、立ち入れない場所を区別してください。
杉並木の保護などのため、バイパスが開通した旧道の一部は車両通行止めとなり、歩行者だけが通れる区間になっています。
日光街道では水無バイパスの旧道の約800mと七本桜交差点の東側約0.4km、例幣使街道では日光市明神から板橋までの約1.0kmが、歩行者のみ通行できる区間です。
これらの区間は車両通行止めのため、並木をゆっくり眺めたいときの候補になります。
地図上では道がつながっていても、歩く場所を確認できないときは、その先へ進まず経路を見直しましょう。
車が通る区間を歩く場合は、歩道や路肩の幅を確かめ、車の流れに注意しながら進んでください。
帰りの交通と集合場所を共有する
公共交通機関を利用する場合は、行きの到着地点だけでなく、帰りに乗る駅や停留所も確認します。
今市周辺には東武日光線の上今市駅・下今市駅とJR日光線の今市駅があるため、歩き終える地点に近い駅を選んでおくと帰りがスムーズです。
同行者と別れて撮影する可能性があるなら、出発前に次の情報を共有しておきましょう。
- 歩き終えた後に集合する場所
- 予定を変更するときの連絡方法
- 帰りに利用する交通機関と乗る場所

日光杉並木の見どころは視線を変えて楽しむ
同じ場所でも、道の先を見るか、幹を見るか、頭上を見るかによって、目に入る風景が変わります。
歩きながら見上げ続けず、周囲と足元を確認してから観察しましょう。
道の奥へ続く幹の重なりを見る
手前の木と奥の木がどう重なるかに注目すると、並木の奥行きを感じやすくなります。
道の正面だけでなく、通行を妨げない位置から斜めに眺めると、幹の間隔や枝の重なり方の違いを探せます。
同行者と気になった形を伝え合うのも、景色をゆっくり見るきっかけになります。
幹の表情と空の見え方を比べる
木に触れなくても、樹皮の模様や幹の輪郭は観察できます。
近くの幹に視線を向けた後で、枝の間から見える空を眺めると、細部と全体の印象を比べられます。
明るさや影の違いを楽しみながら、気に入った眺めを見つけてみてください。
保護のためのオーナー制度で契約された杉には「オーナーズプレート」が設置されていることがあるので、探しながら歩くのも楽しみ方の一つです。
桜杉や砲弾打込杉など名前の付いた杉と坂を探す
日光杉並木には、姿や由来にちなんで名前の付いた杉や坂があり、探しながら歩くと散策に変化が生まれます。
日光街道を宇都宮方面へ向かう森友地区付近には、杉の割れ目から育った桜と杉が共生する珍しい「桜杉」があります。
同じ付近には、根元の空洞に大人4人ほどが入れる杉の大木「並木ホテル」もあります。
日光街道沿いには、戊辰戦争(1868年)の前哨戦で砲弾が当たったと伝わる「砲弾打込杉(ほうだんうちこみすぎ)」もあります。
例幣使街道の「十石坂」は、東照宮の大きな石鳥居を運ぶ際に苦労した急な坂で、米十石を要したことが名前の由来とされています。
同じく例幣使街道の「地震坂」は、1949年(昭和24年)の今市地震で杉並木とともに道の形が変わったことから名付けられました。
名前の付いた杉を見つけても、空洞に入ったり幹に登ったりせず、通行の妨げにならない場所から外観を眺めましょう。

日光杉並木の撮り方は立ち位置と構図から考える
写真を撮るときは、通行の妨げにならない立ち位置を先に選び、その場所から撮れる構図を考えるのが基本です。
残したい印象に合わせて画面を選ぶ
幹の高さを見せたい場合と、道の続く様子を残したい場合では、画面に入れたい範囲が異なります。
木を全部入れようとせず、何を主役にするかを決めると、写真の印象をまとめやすくなります。
離れた位置からズームの望遠側で撮ると奥の幹が詰まって見え、並木の密度を強調できます。
広角側で道の端から奥へ続く線を斜めに入れると、並木の長さが伝わりやすくなります。
残したい印象と構図の組み合わせを整理すると、次のようになります。
| 残したい印象 | 構図の工夫 | 画面に入れるもの |
|---|---|---|
| 木の高さ | 縦向きに構える | 幹と頭上の枝 |
| 道の奥行き | 奥へ続く線を使う | 道と重なる幹 |
| 樹皮の表情 | 模様を部分で捉える | 幹の輪郭と陰影 |
立ち位置を変える前に周囲を見る
画面を見たまま後ろへ下がったり、車道へ出たりして撮影しないでください。
人とすれ違う場所では撮影をいったん止め、相手が通れる余地を残します。
通行人が大きく写り込む場合は、向きを変えるか、通り過ぎるのを待ちましょう。
車が通る区間では、車道にはみ出して構えたり、道の中央で立ち止まったりしないでください。
撮影機材は現地の案内に合わせる
三脚などを使いたい場合は、使用できる場所や条件を事前に確認し、現地に案内があれば従いましょう。
高い杉に囲まれた並木の中は日差しが届きにくい場面もあるため、カメラをしっかり構えて手ブレを防ぎ、明るさの設定も見直しましょう。
写真に不要な枝や草が入っていても、折ったり動かしたりせず、画角を変えて対応します。
撮影後に写真を見直すときも、道をふさがない場所へ移ってから確認してください。

日光杉並木街道の散策に合う服装と持ち物は天候で選ぶ
散策には、履き慣れた靴と動きやすい服装を選び、出発前に天気予報を確認しましょう。
持ち物を増やしすぎず、両手を使いやすい荷物のまとめ方にすると歩きやすくなります。
足元の状態に合わせて予定を変える
濡れた地面や落ち葉、段差がある場所では、景色だけでなく足元にも注意を向けてください。
ベビーカーや車いすを利用する場合は、歩く区間の路面や段差を事前に問い合わせ、自分たちに合う経路を選びます。
予報が変わったときや、現地で歩きにくいと感じたときは、予定した範囲にこだわらず引き返すことも考えましょう。
気温や雨に応じて携帯品を選ぶ
準備は季節の名前だけで判断せず、当日の気温や降水の予報に合わせて調整します。
天候に合わせた持ち物と、歩くときの行動を組み合わせて考えましょう。
| 天候の目安 | 用意したいもの | 歩くときの工夫 |
|---|---|---|
| 暑さが気になる日 | 飲み物、帽子 | 休憩を挟む |
| 雨が予想される日 | 雨具、タオル | 濡れた足元を確認 |
| 冷え込みそうな日 | 調整できる上着 | 体が冷える前に戻る |
休憩や荷物の出し入れをする場所も、ほかの人が通る動線を避けて選んでください。
並木沿いを長く歩く場合は、トイレや休憩できる場所を出発前に地図で確かめ、駅や公園などで済ませてから歩き始めると安心です。
日光杉並木を守るために知っておきたいマナー
木々を眺めるときは、幹や根に負担をかけず、周囲の人の通行や暮らしにも配慮しましょう。
杉並木が減り続けている理由を知る
並木台帳が作られた1961年(昭和36年)に16,479本あった杉は、60年余りで4,000本以上減っています。
主な原因には、杉の老齢化、台風などの自然災害、通過する車の増加、街道周辺の開発による生育環境の悪化が挙げられています。
栃木県は、並木杉を1本1千万円で購入してオーナーになってもらう制度を設け、その代金を基金で運用し、運用益を樹勢回復などの保護事業に充てています。
通過する車の増加も原因の一つとされているため、並木を眺めるなら車で通り抜けるより、駐車場に車を停めて歩いて楽しむのがおすすめです。
根元に踏み込まず、植物を持ち帰らない
写真を撮るために根の上へ立ったり、枝や幹に体重をかけたりすることは控えてください。
柵や区画の表示がある場合は、その内側へ入らず、案内された場所から観察します。
草花や樹皮を記念に採取せず、気になった姿は写真や言葉で残しましょう。
ごみと音に気を配る
飲み物の容器や包装などを持ち帰れるよう、小さな袋を用意しておくと便利です。
会話や撮影に夢中になって道を占有せず、住宅の近くでは声の大きさにも気を配ります。
個人の敷地や建物の前を、許可なく休憩場所や撮影場所として使わないことも大切です。
まとめ
日光杉並木街道の散策では、杉並木公園の周辺や歩行者のみ通行できる区間など、歩く区間と帰り道を先に決め、現地の案内に合わせて行動しましょう。
道の奥行きや幹の表情、桜杉のように名前の付いた杉など、自分が見たいものを意識すると、景色を味わいながら歩けます。
木々と周囲の人への配慮を忘れず、天候や体力に合わせた無理のない散策を楽しんでください。









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